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片側顔面痙攣

片側顔面痙攣の症状

 三叉神経痛は血管が三叉神経を圧迫することにより痛みのおこる疾患でしたが、片側顔面痙攣は血管が顔面神経を圧迫することで片側顔面のぴくつきが起こる疾患です。目のまわりのぴくつきから始まり口角のひきつりへと進行するのが最もよくみられるパターンです。人前で緊張するとよけいひどく現れます。痙攣の回数が増えると瞼がいつも閉じて片目が使えない状態となり読書、車の運転などにかなり支障がでることになります。また痙攣側に強い肩こりがある方が多いようです。痙攣側の耳の聴覚異常(音が響くなど)を訴えられる方もおられます。三叉神経痛と違い痛みはありませんが、つらい状態です。

薬物治療

 三叉神経痛治療薬のテグレトールのような内服薬はありません。治療法はボトックスという薬を顔面の筋肉に注射するか外科治療で三叉神経痛の場合と同様の開頭術があります。ボトックス治療は2回ぐらいまでに留るのをおすすめしています。注射の技術、量にもよるのでしょうが、顔面の不全麻痺や筋肉の委縮を認める患者さんがおられます。

外科治療

 外科治療法では顔面神経を圧迫している血管を神経より離して移動させます。圧迫血管は1mm径前後の前下小脳動脈であることが最も多く手術の難易度は高くありませんが、三叉神経痛の圧迫血管である上小脳動脈と異なり前下小脳動脈からは脳幹へ細い穿通枝という動脈がでています。穿通枝の有無、数、長さは個人差があります。短い穿通枝の場合、前下小脳動脈の移動が困難なことがあります。移動により穿通枝が脳幹から抜けてしまい脳幹の一部に血流障害がおこり麻痺、感覚障害などがおこるからです。この場合は、移動法をあきらめて血管と顔面神経の間にクッションを挿入する方法を選択します。太い椎骨動脈が圧迫血管の時はその移動に工夫を要するのは三叉神経痛の手術時と同様です。また
合併症について
 聴力障害が最も注意を要する合併症です。聴神経と顔面神経は並んで走行していますので手術操作にて聴神経が牽引され易く聴力障害の原因となります。手術中、ABRという脳波計で聴力を持続的にモニタリングし聴力低下が認められれば手術操作を変更、中断しながら手術をおこないます。これまで術後、耳閉感をいわれた方が数人おられましたが、2ヶ月程で消失しています。また軽度味覚障害を発症された方が一人おられました。
再発について
 再発については、術後1週間以内で移動した血管の固定がはずれて再発しすぐに固定をやりなおした症例がありますが、三叉神経痛と比べ慢性期(数か月たってからの)での再発は少ないと考えます。月日がたってからの再手術は三叉神経痛の再手術にくらべ難易度があがります。聴神経、顔面神経周囲の癒着があり聴力障害を起こさないよう丁寧な剥離操作を必要とします。また聴神経、顔面神経の近くには舌咽神経、迷走神経などの発声、嚥下を司る細い神経が存在しますのでこれらの神経に侵襲が及ばぬよう注意を要します。顔面のぴくつきでも両側の眼瞼のぴくつき、顔面神経麻痺後のぴくつきなどは片側顔面痙攣とは異なる病態のためこの手術の適応ではありません。片側顔面痙攣に対して手術を行い痙攣消失後、3年ほどで反対側に片側顔面痙攣を発症し反対側の手術も行い痙攣が消失した患者さんがおられますが、片側顔面痙攣患者さんの1%は両側に出現するといわれています。